「刀音(とね)」という朗らかな女性がわたしの前から姿を消す。それと同時に、何らかの事件が起きる。刀音は、横に長い鍬のようなバケットのとても大きな重機に低層アパートを据えつけたような物件に住んでおり、そこでおそらく図書館のようなことを営んでいる。外に向かって露出する形で小さな書架が並んでおり、そこに利用者は本を(おそらく)返却していく。
事件の後にわたしと関係者は刀音の住居に赴く。重機を動かして家の表裏を入れ替えるが、何の手がかりも見つからない。わたしは住居の外観から、何かが失われている気がしてならないが、それが何なのか分からない。刀音とわたしが出会った日に、彼女は書架を整理して、数冊の成人向け書籍を残して片付けている。彼女の住居に残された『日本和歌の研究』という研究書の執筆者である「登根(名前は3文字の男性)」が、実は「トネ」姓の関係者ではないかと仮説を立てる。誰がどう連絡を取るのかと周りが揉めるが、わたしは研究書の奥付から、印刷所の電話番号を見つける。登根は1922年生まれであった。